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まさに、真冬のド真ん中である。この時期になると、毎年必ずと言ってよい位に風邪をひいてしまう。
なぜ、飽きずに何度も何度も、風邪は俺を襲い続けるのか。少し油断してしまうと、ここぞとばかりに襲ってくる。
これでは、コタツで昼寝も出来ない。よし!今年こそは「栄養のあるもん食って、厚着して、ゆっくり寝て、
深酒は止めよう」などと誓っても、もう手遅れである。そんな事を考えるという事は、体の調子が悪いという
証拠である。現に、俺は今、下痢で熱っぽくて鼻水が出て喉が痛くてフラフラな感じだ。これを世間一般では「風邪」と言うらしい。 その日は大雪だった。風邪をひいていて今にも倒れそうな俺は、やっとの思いで仕事を終え、ウトウトしながら最終電車に揺られていた。 「次の駅で降りたら、やっと俺の家や」人間とは不思議なもので、その安心感が命取りになる。気が付けば終着駅であった。 見事に乗り越してしまったのである。 所持金160円、歩いて10キロ、大雪、風邪、あらゆる最悪な状況が俺を襲った。駅員さんに事情を話し、 何とか延着料金をまけてもらって外に出た。「どうしようか」考えても仕方ない。俺に残された方法は歩くしかないのだ。シャリ、シャリ、シャリ、 俺は黄緑色のコンバースで溶けかかった雪の上を歩いた。 足元はすぐにビチャビチャになってしまった。霧雨が降る中、それでも歩き続けた。 体中が冷えきっていたのだろう。3キロ程歩いた所で急に腹が痛くなってきた。こうなるとヤケクソである。俺は、ある歩道橋の下で下痢をかましてやった。 いわゆる野グソである。それから、またトボトボ歩いていたが、寒さと絶望感に耐えきれず、何とか状況を変えなければと思った。 俺は、大声で笑いながら走ることに決めた。水分を含んだ安物の革ジャンとスウェットは少し重かったが、体は温もってくるし気合いも入ったので、 何故か楽しくなってきた。 「ウワッハッハ、ウワッハッハー」バシャッ、バシャッ、バシャッ。 俺は真っ白な息を激しく吐き出しながら走り続けた。 「あ〜気持ちええ」そう思った瞬間だった。急に目の前が真っ黒になった。気が付けば、横断歩道のド真ん中で思いっきり転倒していた。 衣類はドロドロで、膝と肘に激痛が走った。あと、もう少し走れば家の暖かいコタツで眠れるはずだったのに。そんなことを考えながら歩いていると、 ボロボロと涙が流れてきた。でも、クヨクヨなんてしていられない。そんな、情けない時間は俺にない。俺は歩き続けた。途中でコンビニに入り、 最後の160円で暖かいコーンポタージュスープを買って、コンビニの中で暖まりながらゆっくりと味わっていた。その時である。 店員がボロボロになっているこの俺様に向かって「お客さん!外で飲んでもらえますか」と強い口調で言いやがった。俺は大人やから、 何も言わなかったが、またそこで涙が出て来た。なんという無情な世の中なのか。でも、俺には嘆いている時間もない。歩き続けなければならないのだ。 ようやく、午前4時過ぎ、家の近所までたどり着いた。新聞屋からは、新聞配達の自転車がいっせいに走り出した。家に到着して、 そのままコタツに肩まで浸かった。「オ〜!幸せや!最高や!」そう感じると同時に眠りに落ちた。 案の定、昼ごろに眼を覚ますと、高熱で動けない。 それに何故か、背中全体が痛くて立つことすら出来ない。それから3日間、仕事も休んで寝込んだことは言うまでもない。 人間とはバカな生き物である。 あれから10年以上たった今でも懲りずに、時たま真夜中の街角をトボトボと歩いている。 つい先日も、最終電車で乗り越してしまい、家まで歩いた。その帰り道で、俺は懲りずに誓った。「電車では絶対寝ない」と。 まあ、そんな事はさて置き、その安っぽい誓いをたてた夜に引いてしまった風邪を直す事が先決である。 |
| (写真/文 KTO) |
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