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この激流のごとく流れ続け、留まる事を知らぬ時間の進み具合に、少なからずの不安を抱きながらも、何とか日々を過ごしている今日この頃である。 2005年も既に半分が通り過ぎてしまった。全くもって、あっと言う間の180日であったように思う。時間の経過が早く感じるという事は、 それだけ充実した日々を送っているからではないのか、と一般の方々はそのように思われるに違いない。しかし、私の場合はそうでない。 これと言って、何をしたという記憶がほとんどないのだ。 この貴重な青春の日々をどのように過ごしているかと言うと、その大半をファンダンゴと家で 過ごしている訳である。ファンダンゴに居る時は、夕刻から夜中まで、途切れる事を知らずにアルコールを摂取し、家に居る時には、何をする訳でなく、 ずっと万年床に横になっている始末で、ほとんど出かけたりしない。あとは、電車に揺られているか、食事をしているか、だけである。 何故、私だけ時間の消費スピードがこんなに早いのか。その答は、この単純な生活パターンによるものであるに違いない。普通の人間であれば、 このような単純な生活にピリオドを打つ為に、何らかの行動を起こし、充実した人生を送る事に力を注ぐのだろうが、私の場合は違う。 私も少しの不安からなのか、このままでは駄目だと思い、何らかの行動を起こそうと頭では考えるのだが、何らかの行動を起こすには、 それなりに力が必要になるので、その前に少しでも多く休もうとする。そこで休んでしまうと、休み過ぎて動けなくなってしまうのである。 結局は自分の欲望に勝てずに、そのままダラダラと過ごしてしまうのだ。 これは、一種の病気ではないのか。万年床で枕の位置を微妙に調整しながら考えてみた。いや、これでは少し後頭部の位置が高すぎる。 二つ折りにした枕の角度をもう少し緩めてみようじゃないか。よし、絶妙なこの感じ。これで良い。そして、体を30度右に傾けて、 テレビのリモコンの入力スイッチをオンにする。 暫くすると、テレビの画面がぼんやりと歪んできて、次の瞬間には頭全体が痺れて、夢なのか現実なのか、 よく分からない世界に突入する。ここは何処なのか。何度か訪れたことのある町だ。いや、もしかしたら、遠い昔に暮らしていたのかも知れない。 私は、細くて曲がりくねった坂の途中にある病院で診察してもらうことにした。病院の名前は覚えていない。 「先生、眠たくて眠たくて仕方がないのですが、 どうなんでしょう」と問いかけてみた。すると、初老の医師は「それは、眠り病ですな。一種のナマケモノです」と答えた。 私は、その輪郭のぼやけた診断に何の疑問も抱かずに、医師に症状を訴えた。「例えばですね、家に居る時はずっと横になっています。 御飯を食べる時にようやく起き上がるんですが、食事が終るとすぐに眠ってしまうんです。正月休みの時には、床擦れになったこともあります。 考える事と言えば、食べ物の事ばかりです。たまには、外に出なければと思い、散歩に出かけるのですが、何故歩いているのか分からなくなり、 すぐに帰って来てしまいます。アルコールは毎日飲んでますが、特に美味しいとは思いません。何しか、頭が一日中重くてぼんやりしてるんです。 そして、時間が想像を絶するほどのスピードで過ぎて行くのです。どうなんでしょう?」白衣が全く似合わない初老の医師は 「あんたはナマケモノですな。一種の眠り病です」と答えた。「眠り病とは、何なのですか?」 「眠り病とは、要するに、普通の人が食事し、栄養を得て生きているのと同じく、あんたは時間を食し、夢を得て生きているのです」 「この病気は治るのですか?」「死ぬ時に夢から覚めます。要するに、死ぬまで治りません」 私は、細く長い曲がりくねった坂道を下りながら、 夢を見ているようだと思った。 私は首の痛みでフッと目を覚ました。時計は昼の一時を指している。出勤までにあと三十分は眠れる計算だ。すぐに枕の角度を調整して、 もう一眠りすることにした。テレビでは、みのもんたが白衣を羽織って、うるさく喋っていた。 |
| (写真/加藤眠一 文/加藤鶴一) |
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