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バンド募集

20th本

ウルトラ募集

KINOSHITA CIRCUS
『数ある銭湯の中でも水風呂の大きさはトップクラスの堺新温泉。
家から近い事もあってここには20年近く通っている。』

※ファンダンゴでは、各日のチケットの電話予約・E-mail予約を
受け付けています。お気軽にお問合せ下さい


吠えろ!ファンダンゴ!!
#154 ケイ兄ちゃん



今朝、早くに目を覚ました僕は、ベランダに出て、初夏の清々しい風を感じていた。 ベランダから町の景色を眺めていると、1本の大きな煙突が目に入った。 僕がここに住みだしてから、長い間お世話になっている銭湯の煙突である。 煙突にはすっかり薄くなってしまってはいるものの、白いペンキで新堺温泉と 書かれている。そういえば、今日は日曜日である。新堺温泉は日曜日だけ 朝風呂営業をしていたはずだ。この清々しい朝に、銭湯で朝風呂。想像しただけで、 気分が良くなってきた。これで今日一日がいい日になりそうな気がした。 僕は石鹸とタオルだけを持って、家を出た。新堺温泉までは徒歩5分である。 僕はまるで何かに勝ったような気分で、意気揚々と歩いていた。勢いよく銭湯の 暖簾をくぐる自分を想像していた僕は、銭湯に着いた瞬間に崩れ落ちた。 銭湯のシャッターが完全に閉まっていたのだ。シャッターには“お詫び”と 書かれた貼り紙が貼ってあり、それにはこう書かれていた。
「営業時間変更のお知らせ/営業時間14:0024:00/
*日曜日の朝風呂は廃止させていただきます。」
以前までは、25:00までの営業だったはずだ。営業時間が短くなった上に、朝風呂も廃止である。 これも不況の影響なのか。キラキラしていた僕の日曜日の朝が、一瞬にして灰色になってしまった。 しかし、崩れ落ちた体を立て直しながら、考えて思った事がある。「つぶれてなくて良かった」。

大阪郊外の工場が立ち並ぶ町にケイ兄ちゃんの家がある。ケイ兄ちゃんは僕の母方の親戚である。 僕が電車を乗り継いでケイ兄ちゃんの家に着いたのは、7月のギラギラした太陽が傾きかけた 午後3時ぐらいだった。僕が少し照れ気味で声をかけると、ケイ兄ちゃんは首から垂らした タオルで汗を拭いながら、「おう!よう来たな!もうちょっとで終わるから、家で コーヒー牛乳でも飲んどってえな。」と、満面の笑みで答えてくれた。ケイ兄ちゃんは 上半身裸になって、薪を割っているところだった。僕より5つ年上のケイ兄ちゃんは、 体が大きい上に筋肉も人一倍付いていて、まるで大人のようだった。額から、頭から、 背中から流れ落ちる汗が、夏の日差しに照らされて、まるで光っているように見える ケイ兄ちゃんは、やっぱりカッコ良かった。バキッ、バキッ、コン、コン。 軽快に斧を操っている姿が面白くて、僕は家に入るのも忘れて、ずっとケイ兄ちゃんの 傍らに立って薪割りを眺めていた。

薪割りが終わり、ケイ兄ちゃんの部屋で二人コーヒー牛乳を飲みながら喋っていた。 中学3年生のケイ兄ちゃんは、頼りがいのある優しい不良という感じがして、僕は大好きだった。 部屋には、皮ジャンを着てバイクに跨がっているロックバンドのポスターや際どい水着姿で こっちを見て微笑んでいるアイドルのポスターが一面に貼ってあり、窓際のラジカセからは ロックが流れている。僕はケイ兄ちゃんに聞いてみた。
「なあ、薪割りって面白いん?」
「あんなもん、面白ないわ!しんどいだけや!」
「何で、やってるん?」
「やらな、お父ちゃんに怒られるんや!」
ケイ兄ちゃんの家は銭湯である。ケイ兄ちゃんのお父ちゃんは 体が小さいが厳つくて、いつも銭湯の番台に座りながら、大好きな民謡を熱唱しているような人だった。 夕方になって、ケイ兄ちゃんは僕をゲームセンターに連れて行ってくれた。当時はゲームセンターという 遊び場が出来たばっかりで、不良の溜まり場といった感じがあって、大概の学校で禁止されていた。 ゲームセンターには、ケイ兄ちゃんの友達が4人いて、皆が僕に優しくしてくれた。僕はどこか 心強い気持ちになり、キラキラして眩しい不良の匂いがするゲームセンターで、時間を忘れる程に 遊び呆けた。帰り道、ケイ兄ちゃんは僕に強く言った。
「ゲームセンター行った事は絶対に お父ちゃんに言うなよ!これは男と男の約束やからな。」
僕がうなずくと、ケイ兄ちゃんは ニコッと笑った。

家について、玄関をガラガラと開けると、おっちゃんが血相を変えて走ってきた。 「おい!ケイ!お前、またゲームセンターに行っとったやろ!」そう怒鳴った瞬間、ケイ兄ちゃんに 往復ビンタをかました。そして、僕の方を向いて、僕にも怒鳴った。
「アンタもこんな不良に 付いて行ったらアカンで!」おっちゃんは何故か昔から、僕の事をアンタと呼んでいた。 僕らは夕食の焼きそばを二人で食べながら、ボソボソと話した。
「何でバレたん?」
「風呂屋はな、どんな情報でも入ってくるんや。今日はしゃあないわ。」
夕食後、僕は久しぶりの 銭湯を楽しんでいた。僕らが長い間水風呂で、潜水大会をしていると、またおっちゃんが血相を 変えてやってきた。
「アンタらが水風呂おったら、他のお客さんが入られへんがな!」 おっちゃんは、僕とケイ兄ちゃんに一発づつゲンコツをかました。

翌朝、おっちゃんは僕らを呼び出して、小遣いをくれた。「ケイ、このお金で市民プールに でも連れて行ったげ。その代わり、薪割りは忘れるなよ。」ケイ兄ちゃんは昨日の友達も誘って、 プールに連れて行ってくれた。そのプールでも事件は起きた。ケイ兄ちゃんと対立している隣中学の 集団と喧嘩になったのだ。僕はドキドキしながら遠巻きに眺めているしか出来なかった。 結局、警備員に止められて終わったのだが、ケイ兄ちゃんはプールからの帰り道にまた僕に 言うのだった。「お父ちゃんには内緒やで。」その夜、ケイ兄ちゃんのグループと花火をした。 それもまたムチャクチャで、ロケット花火の打ち合いまでは良かったのだが、最後は人の住む アパート目がけてロケット花火を飛ばしだした。結局、パトカーのサイレンが鳴り響き、 僕らは全速力で逃げたのだが、その帰り道にケイ兄ちゃんはまた僕に言った。 「お父ちゃんには内緒やで。」翌日、家に帰る僕を、駅まで送ってくれたケイ兄ちゃんが 別れ際に言った。「また遊びに来いよ!あと、俺がお父ちゃんに内緒やって言うた事は、 お前のおっちゃんとお母ちゃんにも言うたらアカンで。」僕は、頷きながら答えた。 「男と男の約束やんな。」短い間だったが僕にとってはちょっと大人になる事が出来たような、 意味のある一人旅の終わりだった。

僕が30になった頃なので15年前の事になる。ケイ兄ちゃんは長い間勤めていた仕事を辞めて、 かたくなに嫌がっていた風呂屋を継ぐ決心をした。その事は、僕にとっても何だか嬉しかった。 それから色々ありながらも頑張っていたケイ兄ちゃんだったが、4年程前ケイ兄ちゃんから 突然電話がかかってきた。ちょっと聞いてもらいたい話があるという事だった。 嫌な予感もしたが、僕はケイ兄ちゃんが連絡をくれたのが嬉しくて、出かける事にしたのだった。 ケイ兄ちゃんは僕のグラスにビールを継ぎながら、少し言いにくそうに言った。
「風呂屋、廃業するわ。」僕は継がれたビールを一口飲んでから答えた。
「なんでなん?」
「もう、お父ちゃんもお母ちゃんも歳やし、俺一人でやっていくのは無理やわ。
儲かっとったら話は別やけど、どこの銭湯も苦しいんちゃうかな。」
何だか僕の歴史の 1ページが失われるような辛い気持ちになったが、その100倍以上もケイ兄ちゃんは 辛かったに違いない。その夜、僕らはまるであの時のように、ヤンチャをして遊んだ。 この世の何もかもを忘れる程遊んだ。
何をどんなに遊んだかは、ここでは言えない。 何故なら、それは僕とケイ兄ちゃんが交わした、男と男の約束だから。


*東日本大震災義援金に関して*
扇町para-diceさんからチャリティーイベント"ONE WORD FOR ONE WORLD"の
売上金 ¥ 59,000を預かりました。この金額に関しましては、後日責任を持って、
ファ ンダンゴ常設募金と共に「東北ライブハウス大作戦」に寄付いたします。
引き続き、宜しくお願いいたします!!

『NBC作戦本舗』
『南相馬の託児所「KID'S CLUB」』
『ONE WORD FOR ONE WORLD』
『東北ライブハウス大作戦』
(文:加藤鶴一)

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