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バンド募集

ウルトラ募集

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『慶長元年(1596年)創業の老舗和菓子屋「大寺餅」。
僕の地元堺では有名な和菓子屋である。』

※ファンダンゴでは、各日のチケットの電話予約・E-mail予約を
受け付けています。お気軽にお問合せ下さい


吠えろ!ファンダンゴ!!
#158 津田さんの事



「てっちゃん!遅いやないか!早よ、餅持って来てくれな、もう開店やぞ!どこ行ってたんや!」
「わて、ハワイに行ってましてん。」
「アホぬかせ!しょうもない事言うてる暇あったら、早よ餅持って来い!」
「お〜怖〜、堪忍してや〜。」
「カトちゃん、餅運ぶのん、手伝ったって!!」

僕は16の頃、ゴールデンウィーク周辺の10日間だけという約束で、大寺餅という堺にある 老舗の餅屋でアルバイトをしていた。餅屋と言っても餅を作る訳ではなく、 百貨店の食料品売り場に出張して子供の日の為のちまきや柏餅を売りまくる仕事である。
「初めまして!今日からお世話になる加藤と申します。宜しくお願いします。」
初出勤の朝、僕がドキドキしながら挨拶をすると、 「ああ、あんたか!宜しくな!私が津田さんや!」津田さんは30歳位の女性であるが、 その喋り方や佇まいはどう見てもオッサンだった。
「カトちゃんは販売の仕事はした事あるんか!」
「はい、ちょっとだけあります。」
「はあ!何て!腹から声出して喋らな聞こえへんがな!」
いきなりのボディーブロウに、僕はエラいとこに来てしまったと思った。
津田さんは一通りの仕事を僕にテキパキと教えてから、
「てっちゃんが餅運んで来るまで、ちょっとタバコ吸うてくるから、その辺奇麗に掃除しときや!」 と言って、走って休憩室に向かった。しばらくすると、店の前に白衣を着たヨボヨボの爺さんが台車にケースを山ほど積んでやって来て
「兄ちゃん、新しいバイトか?ルミちゃんは?」と尋ねた。
「ルミちゃんって誰ですか?」
「津田のおばはんやがな。怖いやろ!」
「いやあ、まだ今日初めて会ったばっかりですから・・」という会話をしていると、 津田さんが走って帰って来た。そして、開口一番、もの凄い勢いで白衣の爺さんを怒鳴りつけた。
「オッサン、遅いやないか!早よ餅降ろせ!」白衣の爺さんはビクッとしてから、 次から次へと餅の入ったケースを僕に渡しだした。ようやく全てのケースを降ろし終わると、 津田さんが白衣の爺さんを僕に紹介してくれた。
「これが役立たずのてっちゃんや!てっちゃんって呼んでええからな!」
「は、はいっ!加藤です。宜しくお願いします!」
てっちゃんは本社から百貨店まで出来上がった餅を運んでくる重要な役割ではあるが、 何故かいつも津田さんに怒られていた。

たかが餅屋と高を括っていたが、世間の人がこんなにも餅を買うのかと
驚く程に忙しい店だった。 老舗の餅屋が子供の日の為に特別にちまきと柏餅を作っているからなのか、 世間には子供の日を祝ってもらえる子供がこんなにたくさんいるのか、そんな事はどっちでも良かった。
「いらっしゃ〜い!いらっしゃ〜い!ちまきに柏餅はいかがですか〜!」
「アカン!アカン!それで売れると思ってるんか?お客さんの目を見て声出すんや!」
津田さんは事あるごとに、オッサンみたいな声で僕を怒鳴りつける。 僕も意地になって声を出す。忙しい時はまだいいのだが、お客さんが途切れた時が大変だった。 お客さんが途切れると、「よし!ちょっと煙草吸うてくるから、 その間にしっかり大声出して、お客さんを集めとくんやで!分かったな!」と言うだけ言って、 また休憩室の方へ走って行く。 その間、僕はフロア中に響き渡る声で叫び続けなければならなかった。
「お〜い!こっちやで〜!大寺餅の柏餅とちまき〜。端午の節句にお土産に〜!」 もうヤケクソである。そんな僕を偶然通りかかった友達のお母さんが見つけたりして、 クスクス笑いながら声を掛けてきたりする。そんなものもおかまい無しに大声を挙げる。
「おばちゃ〜ん、久しぶり〜!お餅買うてえや〜!」商品が少なくなると、
津田さんは 「よし!その調子や!まだまだ売れるで!」と言って、 本社に追加の発注をかけるのである。発注してから1時間程して、餅を大量に詰め込んだケースを 山積みにした台車をフラフラ押しながら、てっちゃんが現れるのである。 そのてっちゃんの姿を見るなり津田さんが怒鳴る。
「こら!おっさん!どこでサボってたんや!遅いやないか!」てっちゃんは、 その津田さんの激しいツッコミに「わて、ハワイに行ってましたんや。」というボケを 必ず毎回かますのである。
僕もその毎回繰り返される吉本新喜劇のようなボケに 最初は笑っていたが、
途中からは「てっちゃん、もうええから早よケース降ろそうや!」と言えるになっていた。

てっちゃんが持って来た追加の商品を並べてからが本当の勝負だった。
地下食料品売り場は夕方から閉店までが一番の正念場である。
「カトちゃん、これ全部売らな帰られへんで!もし余ったら、今日の給料にするからな!」「ええっ〜!」
「それが嫌やったら、もっと声出して売らんかいな!」 僕は叫び続けた。
もはや、ここは百貨店の地下食料品売り場ではない。ある種の戦場だ。
ちょっと手を抜くと、津田さんの怒声が飛んでくる。
「いらっしゃ〜い!いらっしゃ〜い!大寺餅のちまきに柏餅!坊ちゃん、お嬢ちゃんのお土産に〜!美味しいに決まってる〜!松田聖子も食べてるでえ〜!」
声がかれても、叫び続けなければならない。あまりにも下品な呼び込みだという事で、食料品売り場の偉いさんが注意しに来る事もあった。
しかし、その度に津田さんは謝りはするものの、偉いさんが見えなくなると
「なんじゃ、偉そうにしやがって!カトちゃん、もっとやったれ!!」と、
僕に命令するのである。そんな事を繰り返して、ようやく終わりが見えかけた頃、
ラストスパートが始まるのだ。
「カトちゃん、今からが勝負やで!」
「えっ、まだ勝負があるんですか?」
「当たり前やがな!6時過ぎたらタイムサービスや!あと1時間でこれ全部売り切るで!」 と、最後のケースから商品を全部出しながら、僕の目を睨んでいる。
「よし、いくで!全部半額や!声出していこか!!」
津田さんのこの一言でタイムサービスが始まる。 僕は既にかすれてしまった声を張り上げて、叫び続けた。
「奥さ〜ん!買うてえな!美味しい美味しい柏餅!
全部半額でええで〜!持ってけ泥棒!!」
そして、ようやく商品が売り切れようとしかけた頃に、閉店の音楽が流れるのであった。そんな短いようで長かった10日間、 津田さんに鍛えられた僕の声が最後には魚屋のオッサンのような声になっていた。
最終日の仕事が終わって、津田さんは僕にプレゼントをくれた。
「よう頑張ったな!助かったわ!これ、しょうもないもんやけど、津田さんからの子供の日のプレゼントや。」
プレゼントの袋を開けて見てみると、 そこにはブリキの鎧とプラッチックの刀とちまきが5本入っていた。そのプレゼントを見た時、それまで経験した事のなかった何とも言えぬ 甘酸っぱいような感覚になったのをよく覚えている。

あれから何度か津田さんに呼んでもらって、仕事を手伝ったりしたが、次の仕事が見つかってからはもう会う事もなかった。
しかし、数日前に地元堺の祭りでブラブラしていると、どこかから聞き覚えのある声が聞こえてきた。 その声のする方に行ってみると、何とそこに津田さんがいたのだった。
相変わらずの低い声で「良かったら食べてみてね〜、堺の大寺餅〜」と呼び込みをしている。何となく目が合ったような気がしたが、そのまま通り過ぎようとすると、 「カトちゃん!カトちゃんとちゃうか?」と声を掛けてくれた。
「うわぁ〜、津田さん、ご無沙汰です。」
「やっぱり、カトちゃんや。オッサンになったなあ。何年ぶりや?」
「25年ぶり位とちゃいますか。津田さん、相変わらず元気そうですねえ。」
「元気だけしか、取り柄あれへんがな。まだまだ続けまっせ!」
そう言いながら、津田さんは満面の笑みで大きく手を振った。


(文:加藤鶴一)


*東日本大震災義援金に関して*
ファンダンゴ/村上率いる物資直送チームが、皆様から預かった
ファンダンゴ常設募金箱のお金を物資に代えて、11/26,27に
気仙沼、南三陸、 石巻へ向かう予定になっております。
引き続き「ファンダンゴ常設募金箱」への
ご支援を宜しくお願いいたします!!


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